赤ちゃんのうちから人を信頼できるようになる信頼感は育まれる

この前、お友達のママが、ある講座に出るために、8か月の男の子を3時間ほど預かりました。3時間、泣かずにずっとご機嫌で遊んでいたTちゃん。途中、授乳のためにママのところに戻りましたが、その後再び離れるときも泣くこともなく、あっという間の3時間でした。

小さな赤ちゃんでも、ママと離れるときは不安です。小さなうち、託児に預けると、ずっと泣きっぱなしのこともあるでしょう。赤ちゃんが、泣くとき、泣かないときの違いは何でしょう?

それには、信頼感が関係しているのではないかと思います。この人だったら安心という、ママの信頼感も、赤ちゃんに伝わります。逆に、長い時間、ママがいなくて大丈夫かな?とか、この人で大丈夫かな?という不安も赤ちゃんは敏感に感じ取っているのではないかと思うのです。小さな赤ちゃんでも、そんな信頼感を感じています。

では、この「他者を信頼できる信頼感」は、赤ちゃんのうちからどうやって育まれていくのでしょうか?

基本的信頼感は、乳幼児から育つ

前回、『人を信頼できる社会に』の記事にも『信頼』について書いていますので、そちらもあせてご覧ください↓

児童精神科医であった故佐々木正美先生の著書『子どもへのまなざし』に、ある実験のことが書いてありましたので、引用して紹介します。

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30年ぐらい前までは、深夜の授乳について、赤ちゃんが泣くたびおっぱいをあげたほうがいいとか、やらずにいることで、だんだん赤ちゃんは泣かなくなり、朝までぐっすり眠るようになるんだとか、いろんな意見がありました。でも、どちらがいいのか、わからずにいました。

そこで、ある乳児院で、こんな実験をしました。

子どもをアトランダムに二分して、望んだ乳児に深夜に授乳するグループと望んでもミルクを与えないグループに分けまして、その後ずっと調査が行われました。

普通乳児院では夜中の2時3時に、オッパイが欲しいからと泣いたからといってミルクを与えません。与えられるほど、夜勤の人手が無いのです。一方の子にはあげるわけです。研究のためにあげるわけですから、研究費で夜間の保育者を雇うわけです。そして赤ちゃんが欲しがればあげるわけです。子どものことを虐待しているわけではなくて、従来の乳児院のやり方にプラスアルファしてあげるわけです。日本では例がありません。欧米で 何カ所も実験されました。

そして、夜中の2時3時にですね、夜泣きをしたからといってオッパイをあげないでおくと、子どもは早い子は3日くらい、長い子でも2週間は越えないそうです。平気になってしまうわけです。翌日の朝まで泣かない子になります。やったり、やらなかったりすれば、これはずーっと泣き続けます。それで、やらないでおくと2週間くらいで翌日の朝まで泣かないで静かに待てる子になりました。

【 基本的信頼感と不信感】

そこで、翌日の朝まで泣かないで待てるようになった赤ちゃんは、忍耐強い子になったのか、現実認識ができるようになったのかどうかということです。

実際は、忍耐強い子になったのはなくて、あきらめの早い、無力感の強い子になっただけなのです。

ミルクをもらえない子は、残念ながら、不信感と無力感が強くなってしまいます。やったってダメなものはダメだ。すぐに努力を放棄する子どもになるわけです。無力感の非常に強い子ども、挫折しやすい子ども、それから周囲の人に対する基本的な不信感、こういうふうなものが、いろんな程度に子どもに身についてしまうということがわかりました。ですから無力感というのは、劣等感、自己不全感、それと周囲の人に対する不信感とは背中合わせで同じものなんだということがわかってきました。

逆の言葉でいいますと、自分を信頼する力というのは、人を信頼する力と同じものなんだということがわかって来ました。自立してちゃんと育つ子どもは、自信のある子どもは、オッパイを与えられた子なのです。泣くたびにもらえたのです。

ですから、夜中の2時3時でもオッパイが欲しければもらえる、昼間、抱き癖がつけば抱き癖を十分承認してもらえる。ということは、人に対する、基本的な信頼感は強くなり、人を信じることができるため、その後友達も作りやすいです。

 

【依存から自立へ】

人生の最初の時期(乳児期から幼児期のはじめ)には子どもはお母さんを中心に、周囲の人に「自分が望むように」愛されることが不可欠ともいえるほど大切で、その後の人格の形成過程に決定的な意味をもつことになります。

子どもは充分な「依存」体験をへて、はじめてしっかりした「自立」に向かっての発達過程を歩み始めるといわれる意味は、そういうことなのです。赤ちゃんの泣き声(呼びかけ)には、しっかり耳を傾けて、その欲求をすべて満たしてやろうという心がけが、乳児期の育児には必要ですし、そのことが自然に楽しくできることが養育者(母親)や乳児保育者に望まれます。

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HP『子育ての心理学』でも読むことができますので、本のない方は以下のリンクよりご覧ください。その他の子どもの発達についてと、関わり方について参考になることがたくさんありますので、ぜひ、お時間のある時、他の記事も読んでみてください。

 

つまり、赤ちゃんの欲求を、ちゃんと満たしてあげられるかが大事だということです。それは、ママでなくても、養育者、保育者、だれでもいいのです。

泣いたら、欲求が満たされる。満たしてくれる人がいるということは、人は信頼できるということだと赤ちゃんは学んでいきます。最初はそこからなんです。

人への信頼感が高い子は、自己肯定感も高い

先ほどの佐々木正美先生の文の中に、自分を信頼する力というのは、人を信頼する力と同じものなんだということがわかって来ました。という言葉があります。

自分がまるごと受け入れられて、はじめて人を信頼出来て、同時に、自分は愛されていると感じ、自分に対しても自信が付くのです。

これは、赤ちゃんに限らず、幼児期でも、小学生になっても、変わらないことなのではないでしょうか。

いつも怒られっぱなしの子供は、自己肯定感が低い。それは、うちにやってきていた悪たれたちを見ていて感じた事です。言うことを聞かない、いつも学校や家で怒られている。そんな彼らと初めて出会った頃は、

「俺、いつ死んでもいいもんね。明日死んでるかも」

「俺、バカだから、どうせ~できねえし。」

そんなことをよく言っていました。

遊びを考える力は天才的なのに、人を信頼する力と、自分に対する自信が非常に低い。

彼らと出会ったのは、彼らが4,5年の時。関わり始めて1年ほどで、彼らの言動から、「いつ死んでもいい」とか、「どうせ俺~だから」という言葉はなくなっていきました。

彼らとどう関わっていたかといえば、とにかく彼らを受け入れてきた。どんなことがあっても、(ひどいときには何でこんなに怒っているのか、説明したうえで、二度と来るなと言ったこともあるけれど、一週間もすればまたやってきて、ごめんなさいと謝りに来たので、その都度許してきた)彼らをまるごと受け止めつづけた。友人には、「そんなこと、よく許せるね」と、よく言われたけど、私には、彼らが愛おしかった。

写真の、お父さんにしがみついてる子は、うちの子じゃありません。悪たれ3人組のうちの一人です(*^-^*)。こんな風に、おんぶもよくせがみました。

二年後には、悪たれ3人組のうちの一人は、「新藤さん、生きてる?」って言ってやってきて、「新藤さん、生きててね~!」と言って帰っていくようになりました。半分ふざけて言うのですが、彼の言葉が変わったのを感じています。

 

例えば、前述の夜中の授乳ですが、結果としては、夜中に泣いたらおっぱいをあげてた赤ちゃんの方が人に対する信頼感が育まれていました。研究の結果、乳幼児期にもっともこの基本的信頼感が育つということでした。

でも、それができなかったとしても、気が付いたときから育て直しができるのではないかと思うのです。それは、本当は、お母さんや、お父さんが認めてくれたらいいのだろうけど、その子をありのまま認めてくれるのは、家庭の事情でそれが望めない場合でも、地域の人や、先生、子どもに関わる人ならだれでもいいのではないかと思うのです。

人に対する信頼感と、自分に対する自信と自己肯定感を育むには、誰かに認めてもらう、受け入れてもらうことが大事なのだと思うのです。

前回の記事で、「あなたはどうしたいの?」と、その子を信じて任せてもらえた子は、自己肯定感が高かったと書きました。その子を信じて任せるということもまた、その子をありのまま認めてあげるということです。

例えば、子どもがお手伝いをしたいと言った時、子どもを信じて任せてみるのも、同じこと。

洗濯をたたむのが、たとえきれいにたためてなくても、その子が一生懸命できると思って、役に立ちたいと思ってやったことは尊重して最後までやらせてあげる。「助かったよ、ありがとう♡」の一言は忘れずに。

やりたいことをできるだけ信じてやらせてあげるのは、欲しがるおもちゃを買い与えるだけの甘やかしとはちょっと違います。その子の能力を認めて、信じる、そういうことです。

 

子どもの困ったことは、信頼感を取り戻すところから

乳幼児期に基本的信頼感がよく育つと、その後の育児は順調であると言いますが、後になればなるほど大変かもしれないけど、それでも育て直しはできるのだということを覚えておいてほしいと思います。

赤ちゃんであれば、泣けば、なんで泣いてるのかな?ってママは考えますよね。おむつかな?おなかすいたかな?暑いのかな?なんかチクチクするのかな?お腹痛いのかな?眠いのかな?抱っこしてほしいのかな?

一生懸命子どもの様子を見て、泣いてる原因を取り除いてあげようとしますよね。

少し大きくなって、イヤイヤ期になると、泣く代わりに、怒るようになる子もいます。思い通りにならなくて、でも、言葉でうまく表現できなくて。でも、泣くのが怒るのに変わっただけで、何かしら嫌なんですそれは、小さなことかもしれません。いつもと帽子の置き場所が違うとか、お気に入りのシャツが洗濯中で着ることができないとか。ボタンがうまくかけられないとか。

お母さんは、そんなちょっとしたことで怒る子供を見ると、イライラします。とてもイライラします。でも、いつもとはいいません。気持ちに余裕のある時に、何で怒っているのか?寄り添う気持ちをちょっぴり持ってもらえればと思います。

イヤイヤ期は、個人差があって、すぐ終わる子もいれば、長い子もいるし、激しい子もいれば、それほど激しくない子もいます。大変なのは、激しくて長いときです。終わりがないトンネルにいるようで、この状態がいつまで続くかと絶望的になりますが、必ず終わりはやってきます。

とにかく、子どもに信頼されるよう、あなたのことが大好きだと抱きしめ、どれほど大切かを話し、お手伝いをしてくれたら信じて任せ、あなたのおかげで助かったよと伝えてあげる。それだけを繰り返していくだけでいいと思います。

信頼感(愛)のバケツは、子どもによってその大きさは違うようで、バケツが大きい子は、たくさんたくさんそういう機会を作ってあげないとなかなか満たされなくて、満たされるまでに時間がかかるけど、そのぶん、一旦満たされると、人を大事にできるのかもしれない、そう思って、この時期を乗り越えるしかないのかもしれません。

クラウドファンディング

何度も書いておりますが、悪たれ達の話をベースに、本を出版しようと思っています。

すでに応援くださってる方、クラウドファンディングの応援、ありがとうございます!

お陰さまで、86000円(プラス手渡しで9000円)の合計95000円集まっております。

残り52日です。引き続き応援よろしくお願いいたします!

 

 

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