冒険キャンプ二日目、秘密基地を作り、アドベンチャーコースを歩いた子供たち。
森の生き物に出会い、山菜を採りました。普段は便利な暮らしをしているけれど、ちょっと不便な環境で、ちょっと困難にチャレンジしたり、そこに息づく命を感じたり、そういう体験が子どもの生きる力をつけていくのだと思っています。
春の森冒険キャンプ二日目の朝。
夜はぐっと冷え込み、朝も早くから起きてきた子供たちはブルブルしながら、焚き火の前へ。火って、ほんとうにありがたい。朝露に濡れた靴を乾かしながら、焚き火の前で温まる子供たち。
ダッチオーブンには酒田さん作のパスタ、スペアリブとジャガイモと玉ねぎのマーマレード煮が。
パンと、昨日の残りと、ダッチオーブン料理をいただきます!
二日目も、ここからスタートです。
秘密基地を作ろう!
高校生のお姉ちゃんの指導?の下、子どもたちが枝を集めてきて、秘密基地づくりが始まりました。
いい木、見つけたよ~!
中は、子どもが立って入れる高さです。広さも十分。
バズーカ発見!
木を一生懸命集める子、遊んでばっかりで戦力にならない子、集めてくるのに飽きちゃった子、いろんな子がいるけど、それぞれが、ちょっとづつ手伝ってだんだん形になっていきます。
その頃、大人は大人で、子どもたちとは離れた場所に大人の秘密基地を作っていました。
大人は、木を組んだり、ちょっと本気モードです。
自分たちの秘密基地づくりにちょっぴり飽きてきた子供たちが、大人チームの偵察にやってきました。
大人の秘密基地を見て、子どもたちの第一声。
「大人、ずるい!」「道具使うなんて、ずるい!俺たち、枝だけで作ってるのに!」
そう。大人は、麻ひもやナイフを使って、木を切ったり、結わえたりしていたのです。
ブーブー言いながらも、子ども達の秘密基地も、どうやら完成したようです。
アドベンチャーコースは未知の道
秘密基地作りの後は、みんなでアドベンチャーコースへ出発!
原っぱから森に入るところから、すでに笹に覆われているアドベンチャーコース。
早速見つけたのはカラマツの木。
新芽の柔らかい枝先をぽきんと折って、中の髄(芯)を抜くと、ふにゃふにゃのネックレスになります。頭や首にカラマツの飾りをつけた彼は、この先「神様」と、みんなに呼ばれるようになりました。
「あなたの落としたのは、いいジャイアンですか?」っていう、池の神様みたい(笑)。
カラマツのネックレスつけて、再び笹やぶに突入。小さい子は、背丈ほどもある笹やぶ。前の子が歩いた後に行くと、顔にバシバシ当たるので、笹やぶではお姉ちゃんに抱っこされて、先へ進みます。
笹に覆われ、道がわからなくなっています。「こっちだ!」
前の人を見失うと、迷子になりそうな、そんな笹やぶをこいで進みます。
しばらく行くと、林床に笹やぶがない、開けた森に出ました。
枯葉に覆われた林床はふかふかで、森の新芽は淡い黄緑色。鳥の声を聞きながら、さわさわ枯葉を踏みしめ歩くのがとても気持ちのいい森。
森を抜け、林道を歩いて行った先に、前の晩暗闇探検行ったときに見つけた青い小屋があります。昨日は暗すぎて、青い小屋まで行けなかった子供たち。青い小屋に行くぞ!と、張り切っています。
森の先に見つけたのは、なんだか、人が管理しているような小屋と、魚が入ったいけす。
「東北ホタル愛好会」の看板が。
水車小屋まであって、何年もここのキャンプ場に来ているけど、こんなところにこんなのがあるなんて、全く知らなかった・・・。今回は大発見の多いキャンプです。
謎の小屋を確認した後は、これまた初めて通るコースで、田んぼの脇を通りながら、戻ります。きっと、こっちからも行けるはず。
途中、草笛をお姉ちゃんに伝授してもらい、みんなで草笛の練習も。
草笛、ふけるようになったよ!
「網ちょうだい!」と、何か見つけた子がすくったものは・・・
オタマジャクシ?水の中に、たくさんいました。
木を渡って歩きます。
コゴミも、ちょうどいい感じの場所がありました。
そして再びスナヤツメのいるスポットへ。
スナヤツメ探しているうちに、泥沼にすっぽりはまる神様。
助けに行くと、ミイラ取りがミイラになる、泥沼スポット。
みんな泥沼にはまっています。
ここでも再びスナヤツメを二匹ゲットし、満足して戻る子ども達。
ここまで結構な距離を歩いているのに、帰る途中で再び崖に登って粘土を採る子ども達。すごい体力です。
森の生き物、森の恵み
キャンプ場に先に戻った子ども達。何やら騒いでいます。
どうやら、トカゲを捕まえたらしい。
ところがこのトカゲ、捕まえた子が「うちに連れ帰って飼いたい」と、言い出したことで、ケンカになってしまいます。
「森に返したほうがいいよ。森の生き物なんだから、森に返さなきゃだめだよ」っていう子と
どうしても連れて帰りたい子。
とにかく、無理やり逃がしてやろうとしていた子に、まずは、かごに入れて、じっくり観察させてあげようよ。ということで、しばらくそっとしておくことに。
そうしているうちに、森の向こうでは「ヘビ!!」という声が。
草むらの中にいたのはアオダイショウ!
スナヤツメも、子どもたちは最後の最後まで「うちに連れて帰って飼うんだ」と意気込んでいた子供たちですが、迎えに来た親御さんの説得の元、トカゲもスナヤツメも、森に帰してやることを了承した子供たち。
飼いたい気持ちが大きかったのに、お世話する難しさや、本来、森の生き物たちは森にいたほうがいいんだということや、絶滅危惧種で、数が少なくなっていて貴重なものであるということや、いろんなことを考えて、最終的には逃がしてやるという決断ができた子ども達。いっぱい心の中で葛藤したんだと思います。
「バイバイ」小さな声が聞こえます。
森の中には、生き物の他、森の恵みがたくさんありました。タラの芽や、ヨモギ、コゴミ、タケノコ、おいしく食べられるものの他、クロモジの葉っぱはお茶に。
クロモジは、柑橘系のさわやかな香りがします。枝は和菓子のつまようじに使われます。その香りにはリラックス効果があります。
症状によってさまざまな使い方ができる植物で、お茶として飲むと、胃腸やのどの荒れを改善し、濃く煎じた汁を肌に直接塗ると肌荒れを鎮め、入浴剤として使うと冷え性の改善につながります。
樹皮や葉に含まれるテルピネオールとシネオールには抗炎症作用があり、これらの成分が胃腸やのどの炎症に効くとされています。
テルピネオールには抗アレルギー作用もあり、抗菌・殺菌作用のあるリモネンとの相乗効果で、煎じ汁で肌を直接洗うと水虫などの症状が改善するとされています。
また、森の中には、食べられるもののほかに、毒草もあります。
左の白い花のニリンソウは、山菜として美味しく食べられるものですが、同じ場所に生えている右のトリカブトは猛毒です。葉っぱの形がとても似ていて、しかも、生えてきたころの若葉はそっくりなので、間違える方も多いようです。ニリンソウをとるなら、花のついたものを採るなら、間違いはなさそうです。
また、ウルシとタラの芽も、春先芽吹いた若芽はよく似ていますが、タラの木にはトゲトゲがあり、トゲトゲのないのはウルシですので間違えないように。
上はウルシ。下はタラの芽。
見分け方は、トゲがあるのがタラの木。
タラの木によく似ているもので、ハリギリというのもあります。ハリギリもおいしく食べられます。そして、トゲはタラの木よりも大きく鋭い。下はハリギリ。
タラの芽には、葉酸やカリウムが多く含まれているため、妊婦さんにおすすめです。高血圧、むくみ予防、疲労回復などの効果もあります。
ハリギリには、関節炎、できもの、皮膚病などの炎症疾患に優れた効能があり、肝臓疾患、鎮痛作用にも優れていて、腎機能の強化にも。
コゴミは、アクが少なくくせもないので、とても食べやすい山菜です。茹でて胡麻和えにするとおいしくいただけます。
とびぬけて多い栄養素はないのですが、ビタミンA、ビタミンB群(ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、ナイアシン、パントテン酸)、ビタミンC、ビタミンE、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、リン、鉄、銅、亜鉛、食物繊維などを含みます。βカロテンやビタミンEには、抗酸化作用により病気や老化の原因となる活性酸素の発生を抑える作用、免疫活性作用、発がん抑制作用があります。ビタミンCにも抗酸化作用の他、コラーゲンの合成を助け皮膚のシミやシワを防ぐ作用、ストレスに対抗するホルモンの生成を助ける作用があります。
自然にインパクトを与えず、自然を楽しむこと
春芽吹く様々な植物の新芽には、たくさんのエネルギーが詰まっています。
来年もまたとれるように、採りすぎない程度に山の恵みを少しいただくことで、体にもエネルギーを取り入れることができます。
タラの芽なんかは、欲張って脇芽も全部取ってしまうと立ち枯れてしまうので、脇芽はちゃんと残してあげなければいけません。
森の生き物は観察したら森に返し、山の恵みは採りすぎない程度に美味しくいただく。
そうやって、山の命の循環を人間の手で断ち切らないようにするということも、伝えていかなければならないことだと、改めて感じます。
ここのキャンプ場は水が出ません。
だから、持ってきたお水は、とても貴重です。無駄に流しっぱなしにしない。森にインパクトを与えないために、食器は一度トイレットペーパーで汚れをふき取り、軽くお湯や水でゆすぐ。自然の中で、謙虚であること。そういうことも、体験してほしかったことでもあります。